すべての美しいブタ

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グレイテスト・ショーマン

作品データ

公式サイト

www.foxmovies-jp.com

あらすじ・概要

http://eiga.com/movie/86306/

レ・ミゼラブル」でも華麗な歌声を披露したヒュー・ジャックマンの主演で、「地上でもっとも偉大なショーマン」と呼ばれた19世紀アメリカの実在の興行師P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル。劇中で歌われるミュージカルナンバーを、「ラ・ラ・ランド」も手がけたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当した。貧しい家に生まれ育ち、幼なじみの名家の令嬢チャリティと結婚したフィニアス。妻子を幸せにするため努力と挑戦を重ねるフィニアスはやがて、さまざまな個性をもちながらも日陰に生きてきた人々を集めた誰も見たことがないショーを作り上げ、大きな成功をつかむ。しかし、そんな彼の進む先には大きな波乱が待ち受けていた。主人公P・T・バーナムことフィニアス・テイラー・バーナムをジャックマンが演じ、バーナムのビジネスパートナーとなるフィリップ・カーライル役を「ハイスクール・ミュージカル」「ヘアスプレー」のザック・エフロン、バーナムの妻チャリティを「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のミシェル・ウィリアムズが演じる。

鑑賞データ

  • 2018/3/17
  • なんばパークスシネマ
  • 2D 日本語字幕
  • 公開から結構経つが意外と入ってた

評価

★3

以下、ネタバレしてます。

超優等生なエンタメミュージカル

なんか、アカデミー賞にはほぼ絡んでない感じなのに、本国で予想外のヒット、そんでもって日本でもご存知の通りの大ヒット、となってますが、ようやく観に行けました。
アメリカエンタメの世界では知られた存在のP.T.バーナムを描いたミュージカル。
超真っ当に面白い映画で、それなりに楽しんだんですが、正直そこまで・・・。
評価は分かれそうだな、というのが正直なところです。

キャスト

ヒュー・ジャックマン郷ひろみ

まず、ヒュー・ジャックマン。相変わらず歌も上手いし身体も格好良いしで最高なんですが、
この映画では、どうしても郷ひろみに見えてしまう・・。
自信満々の笑顔とダンス・・濃い顔+若作り・・派手な衣装。うん、もうHIROMI GOだよ。。

ミシェル・ウィリアムズは今日も傷付く・・

そして糟糠の妻を演じるミシェル・ウィリアムズ
大好きな女優さんです。ああいう顔良いですよね。(堀内敬子さんに似てますよね。)
出てる作品も名作揃いで

・・・うん。
もうこの人が出てきた時点で「あ・・この奥さん、旦那に裏切られるな・・。」という空気が出まくりですよね。
案の定、本作でもそういう展開になるし・・。

実は一番ドラマチック ザック・エフロン

んで、ザック・エフロン
私がアメリカに住んでいた頃、『ハイスクールミュージカル』が大ヒット中で、嫌ってほどTVその他で見てましたが、
最近はコメディ映画中心な感じで、ちょっと評価されてない感じでしたね。
本作ではついに本業?のミュージカルということで相当頑張ってました。
多分、今作で一番得な役回りだったのではないでしょうか。

アメリカ階級社会

パラリンピックやらR-1やらで何やらタイミンが丁度良すぎたせいで、障害者差別を描いた作品だと思われがちだと思いますが、別にそうでもないのかなと感じました。
サーカスのメンバーは所謂Freaks、まぁマイノリティですね。
んで、マイノリティと白人様であるヒュー・ジャックマンが心通わせる物語、という訳ではなく、ヒュー・ジャックマンもマイノリティなんですね、ある種。

アメリカ、壁だらけやんけ

6年ほどアメリカに住んでいたことがあって、その時の話を少し書きます。
アメリカに行って感じたのは、有色人種⇔白人という以外にも色々な差別というか階級が存在している、ってこと。
人種差別があるのはもちろん知ってたわけですが、例えばユダヤ系やイタリア系は同じ白人でも被差別対象であることや、
イギリスに対して相当のコンプレックスを持っていること、オセアニア諸国の白人に対しても蔑視があること・・。
イギリス的文化を背景とした貴族意識を持つ人がおり、成金に対して否定的であること。

「アメリカンドリームを掴んだ人」=成金 だと思うので、そのチャンスの国アメリカを象徴する存在さえ歓迎されないことがあるのかと、驚いたのを覚えています。

大学の教授でさえ授業中に「成金はアメリカの上流階級には行けない」と言ってましたからね。
成金が上流階級になるには寄付とか沢山して地位を上げるしかない、という文脈での話だったのですが、成金と上流階級に壁があること自体には好意的な立場で喋ってましたね。
教授自身もイタリア系だったので、それなりにアメリカ社会での苦労もあったとは思うんですが。
んで、この映画でもアメリカのイギリスへのコンプレックスと成金への嫌悪が描かれています。
そして、庶民たちのFreaksへの差別も。
結局、登場人物たちは皆、上の階級からの差別に苦しんでいるわけです。

透明になってるから見えないんだよね

でもホントは、Freaksへの差別自体はサーカス以前には存在していないわけです。
なぜならFreaksは透明だから。
視界に映らない、話題にも上がらない、まさか自分達の社会の一員だなんてこれっぽっちも思っていないわけです。無意識に存在しないように振る舞っている。
現に主人公もホームレス寸前にまで落ちて初めてFreaksの存在に気付くわけです。
差別が形になるのは、自分の目の前に現れた時だけ。
そしてそれは、自分自身がそちら側へ"落ちて"しまった時だけ。。

P.T.バーナムはショーというある種露悪的な形で、目の前に連れてきたわけです。
そりゃあ差別もされますよ。理解できないものは怖いし、彼らは下の世界の象徴だから。
でも、まぁ透明よりはよっぽどマシですよね。
サーカスがなかったら彼らは差別と戦うことさえ出来てなかったわけですから。

今も透明になってるけどね

この映画の時代から150年ぐらい経ってるわけですが、どうでしょうね。
こないだ日本のミゼットプロレスが絶滅しかかってる件が話題になりましたが、 そういうことですよね。透明にしてしまってますよね。
ここ数年はすっかり流れが変わってきているように感じるので嬉しい限りですが。
誰もが何かの病気ですからね。Freakじゃない人間なんていないわけなんで。

居場所があるって大切なのはもう知ってる

ただ、この映画が描いているテーマって、「居場所があるって大切」って話なんですが、今更感凄いというか、みんなもう知ってません?
ここ数年のポリコレ運動からのUniquenessについての議論としては、周回遅れ感凄いんですが、どうなんでしょう、これ。
言ってることは正しいのでそれ自体に文句ないんですが、みんな今更感動するのかな?
ミゼットの人がプロレスであったり役者であったり、必要とされる場所があってあーだこーだって、もう共通理解じゃないんすかね。

演出

凄いテンポで進むストーリー

ミュージカルの利点である、歌に乗せてのストーリー展開で、(特に前半)異常にテンポよく話が進みます。
サーカスのメンバー勧誘シーンなんかは、あまりにもトントン拍子に進むので、
「あれ?この映画もう終わるんじゃね?」と心配してしまいました。
実際は、サーカスで大成功を収めた後の人生が主題として描かれるため、そこら辺は早いこと進めたかった感じですかね。
いや、でもほんとに凄いテンポ。20年に渡る純愛の末に結ばれた二人が「嬉しい〜」って歌い初めて、曲終わる頃には妊娠してますからね。
前半はホントにどこに感情移入してみれば良いのか分からん感じです。

ん?ダサくね?

色々書いたんですけど、この映画で最も気になる点は「演出がダサい」ってことなんですよ。
馬車追っかけるシーンの天丼とか、髭のおばちゃんを先頭に突進するシーンとか、夫婦で踊ってる途中にシュッと消えるシーンとか、
特に、ラスト象に乗って登場するシーンとか、あれ要ります?

ん?適当じゃね?

というか、時代考証が適当過ぎてリアリティラインがよく分かんないんですよ。。
なんかスポットライトみたいなのついてたよね?とか、火事の炎を人と並んでライオン見てるぞ・・とか、空中ブランコってそういう仕組みだっけか?とかー!!

音楽

ミュージカルの命、素晴らしい楽曲たち

曲は素晴らしいです。
アフリカっぽいリズム入れたり、今っぽさもあるし。
特にメロディラインは文句なし。歌詞の韻の踏み方も含めてレベル超高いと感じました。

教科書的な感じが少し・・・

ただ、あまりにも正しい感じがしてちょっと気に食わないというか。。
アレンジも綺麗すぎるというか・・
あと、オペラ歌手なのに、その歌でいいの?って感じの曲が・・。
レベッカ・ファーガソン、歌唱自体は別人のものらしいから、ちょっとでもオペラを歌うシーンがあっても良かったような・・。

観て損はない

というわけで、人気出るのもわかるし、大ヒットも文句ないです。
老若男女、全員に勧められます。
デートで観るにも最適でしょう。
ただ、正し過ぎるストーリーとダサさ(いい加減さ)が私はちょっと気になる。
なんかその軽さがP.T.バーナムの人生を表しているようで、正しい演出なのかもな、という思いもあるので、どうも嫌いにはなれない作品です。