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ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 / The Post

作品データ

公式サイト

http://pentagonpapers-movie.jp/

あらすじ・概要

http://eiga.com/movie/88119/
巨匠スティーブン・スピルバーグ監督のもとで、メリル・ストリープトム・ハンクスという2大オスカー俳優が初共演を果たした社会派ドラマ。ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていた1971年、政府がひた隠す真実を明らかにすべく奔走した人物たちの姿を描いた。リチャード・ニクソン大統領政権下の71年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズがスクープし、政府の欺瞞が明らかにされる。ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙は、亡き夫に代わり発行人・社主に就任していた女性キャサリン・グラハムのもと、編集主幹のベン・ブラッドリーらが文書の入手に奔走。なんとか文書を手に入れることに成功するが、ニクソン政権は記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止めを要求。新たに記事を掲載すれば、ワシントン・ポストも同じ目にあうことが危惧された。記事の掲載を巡り会社の経営陣とブラッドリーら記者たちの意見は対立し、キャサリンは経営か報道の自由かの間で難しい判断を迫られる。第90回アカデミー賞で作品賞と主演女優賞にノミネートされた。

鑑賞データ

評価

★4

以下、ネタバレしてます。

スピルバーグの社会派ドラマモード

スピルバーグの裏芸ともいうべき社会派ドラマ。
最近だと『ブリッジ・オブ・スパイ』も名作だったなぁ。
ブリッジ・オブ・スパイ』では、マーク・ライランスという名優にオスカーを連れてきたわけですが、
今回はチャイナシアターの地縛霊ことメリル・ストリープトム・ハンクスという超重量級キャストでこれでもかと濃厚で大人な映画を撮ったって感じですね。

新聞=イデオロギーの表現

アメリカに留学して驚いたのは、各新聞社・テレビ局が明確に政治的ポジションを示していること。
日本に住んでいた高校生の頃は、どの新聞が右っぽいとか左っぽいとか考えたことなかったので、すごく新鮮でした。
英語を覚えるために、新聞を読んだら良いんだろうと考えて、「どこの新聞読んだら良いの?」と語学学校の先生に聞いたことがあります。
その先生は「あんまり自分の考えを押し付けることはしたくない。色々な新聞を読んで意見を深めるべき。」といった内容を返しました。
こっちとしては、英語が勉強したいだけなんで各社のイデオロギーなんてどうでも良いよ、と思っていたわけですが、
色々と分かってくると、中々難しい質問だったんだなー、と。
宗教色の強い新聞だったり、リベラルにべったりだったり、かなり各紙で色が違うんですね。
なんだったら、NYタイムズワシントン・ポストも地方紙の一つでしかないわけで、英語も全然違うわけですよ。
(一応、USA TODAYという全国紙もあります。これは凄く中庸)

ハーコーな新聞ポスト

そんな中で、ワシントン・ポストは、うん・・。
かなり尖ったリベラル最先鋒ってイメージっすね。。僕が住んでたのは、サウスベルトのど真ん中アラバマ州だったんで、
ワシントン・ポストはかなり異色な感じでしたね。(そんなわけでディベートの授業とかではポスト読んでいってカウンター側取る作戦を使ったり。)

9ヶ月の早業撮影

今回の『ペンタゴン・ペーパーズ』に関しては、トランプ大統領のfake newsムーブメントに対するカウンタ−として作られたのは周知のことだと思うので、
この時代、このタイミングで作られるべき映画なんだとは思うんですが、どうしても『スポットライト』を思い浮かべてしまうので、なんか「似てるなぁ・・」という印象は拭えない感じでした。
でも、それも観始めたら全然気にならなくなるぐらい、こちらも素晴らしい映画だったと思います。
それはやっぱり、キャストの圧倒的な演技力と、スピルバーグの適切な演出によるものだと思います。

キャストと演出

キャストは。。まぁ言わなくても良いでしょ。
新しい面とか見れませんよ、もちろん。
あのメリル・ストリープトム・ハンクスです。いつもの、あのやつ。
美しさと強さを持った女と信念を持ったアメリカの男。あの感じです。

んで、演出。
これが素晴らしい。
正直小難しい題材の映画なわけですが、ちゃんと話を見失わないような作りになっている。
各シーンで、今何を争っているのか、何を目指して行動しているのか、という軸がシンプルに纏められているので、ちゃんとついていける。
特に、電話で複数人が話し合うシーン。
喋る人はどんどん替わるのに、映像は意外とカット変わらない。でも、しっかり話は追えるようになってる。
え、なにその情報整理力。こわー
そして、あのレモネードだったり、新聞配達の描写だったり、細かい演出が効いてて、ほんと上手い。
あと、活版印刷とエアシューターっすね。。あれは格好良いなぁ。。燃えるなぁ・・。

スピルバーグのメッセージの普遍性

スピルバーグの映画って「変わらない男」を描いていることが多いと思うですよ。
信念のぶれないことであったり、子どもの頃の気持ちを持ったままであることであったり、いい意味で変わらない、変わってはいけないところを守れる男の話。
んで、今回は「報道の自由」であったり「民主主義」であったりと、アメリカの最もコアな部分を守ろうとする人々の話なわけです。
まぁもう、分かりやすく現代のジャーナリストへのエールであり叱責ですよね。
政治家とツーカーになって、忖度しあった報道になっていないかい?民主主義の火を守るために、国民を守るために報道していたんでしょ?と
問いかけられ、耳が痛くなってくるわけです。
それが、非常に今日的なテーマである、というのがなんとも悲しい話です。
日本でも無いはずの日報が出てきたり・・なんだかなぁ。。。

最後に、劇中でもっとも強烈なパンチラインを振り返って、終わりにします。

In the First Amendment the Founding Fathers gave the free press the protection it must have to fulfill its essential role in our democracy. The press was to serve the governed, not the governors.