すべての美しいブタ

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女王陛下のお気に入り / The Favourite

作品データ

公式サイト

http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/

あらすじ・概要

https://eiga.com/movie/89555/
「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」で注目を集めるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が、18世紀イングランドの王室を舞台に、女王と彼女に仕える2人の女性の入り乱れる愛憎を描いた人間ドラマ。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員グランプリを受賞し、女王アンを演じたオリビア・コールマンも女優賞を受賞。第91回アカデミー賞でも作品賞を含む9部門10ノミネートを受け、コールマンが主演女優賞を受賞している。18世紀初頭、フランスとの戦争下にあるイングランド。女王アンの幼なじみレディ・サラは、病身で気まぐれな女王を動かし絶大な権力を握っていた。そんな中、没落した貴族の娘でサラの従妹にあたるアビゲイルが宮廷に現れ、サラの働きかけもあり、アン女王の侍女として仕えることになる。サラはアビゲイル支配下に置くが、一方でアビゲイルは再び貴族の地位に返り咲く機会を狙っていた。戦争をめぐる政治的駆け引きが繰り広げられる中、女王のお気に入りになることでチャンスをつかもうとするアビゲイルだったが……。出演はコールマンのほか、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン、「ナイロビの蜂」のレイチェル・ワイズ、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルトほか。

鑑賞データ

  • 2019/2/23
  • TOHOシネマズなんば
  • 2D 日本語字幕

評価

★4.5

以下、ネタバレしてます。

おしゃれ映画じゃねーぞ

変態だ変態だ変態だ・・
だって、ヨルゴス・ランティモスだし!!
当ブログでも以前に紹介した『聖なる鹿殺し』のあの監督。
ついに変態映画の魔窟である「英国王室」モノを撮ってしまった。。
これさ、ラ・ラ・ランドで一躍おしゃれ女子の憧れとなったエマ・ストーン目当てに観に来る女子は面食らったんでないかなぁ。
現にそういうグループが映画館にはチラホラ・・あとデートで来たっぽいカップル。残念だったな、ここは間違いだ。

フェチ満載の衣装

まず、出てくる女性の衣装。
なぜか妙に胸元を強調してくる(年齢や美醜を問わず)
んで、めちゃくちゃ現代的な要素を取り入れまくってるデザイン。
なにその芸術性。オスカーの衣装賞、取れなくて残念だね。
あと美術。
ウェス・アンダーソン感というか、シンメトリーな配置の建物や、 女王の部屋の内装など、時代考証的にどうなのかは知らんけど、とにかく独特。
「私はこだわり強いです!」と叫んでいるかのような芸術性。
それでこそランティモス!!好き!!でも年に一回ぐらいで良い!!

露骨なエロ描写

衣装や美術からなんとなーく性的な空気を感じつつ、
序盤でいきなりオナニー見せつけおじさん登場〜(BBクイーンズ風にね、女王だけに)
え?急に??エマ・ストーン登場→即BBクイーンズという、スピード感。

露骨というか露悪的?

その後、女王&レディ・サラの性的な繋がりが明らかになり・・からの展開。
基本的には女同士の戦いがメインで進むんだけど、
唐突にブチ込んでくる露悪的とも言えほど露骨な表現とセリフ。
「あの娘は舌でしてくれるのよ」
とか
「Fuck ×5」
とか、時代考証とかぶっ飛ばしてフックかましてきて。もうなんかすごい良いです。もっとやれ。
その中でも特にお気に入りだったのが、エマ・ストーンが以上に暴力的だったこと。
最近は善人の役ばっかりだったから、鬱憤貯まってたのか、男を殴りまくり。
森の中で前戯がてらにボッコボコにするシーンは劇中唯一の劇場大爆笑ポイントでした。笑うしかない、あんなの。
あと、謎の娼館。なにあれ、最高やんけ。

乳首でドーン!!

衣装でうっすーらと胸元に意識を集中させておいてからの、エマ・ストーンのラブシーン。
これ、「お?乳首出るんかな?」となるわけですよ、こっちは。
それが実際は肩透かし。。
「うわー結局そんな感じかー。ですよねーー」
となってからの、
寝起きのシーンでドーン!!と一瞬だけ映る乳首。
いや、あのタイミングさ、もう普通にホラー演出やん。
絶対ここのシーンのためにラブシーンで乳首隠したやん。
なんか最近の映画だと乳首だけCGで他の人のに変えたりするらしいので、
あれがエマ・ストーンのリアル乳首であるかは分かりませんが、なんか無駄に乳首が印象残ってるわ。

男は基本アホ

これはもう最近の映画のお作法となりつつある感じなんだけど、この映画でも男は自分勝手でアホ揃い。
ニコラス・ホルトが相変わらず白塗りで演じてた、あの政治家が一応の悪役というか手強い立場なんだけど、
そいつも、全裸のおじさんにトマトを投げつける謎の遊びを開催(戦時中なのに!)というアホっぷり。
そのくせ国のためと言いつつも、私利私欲を満たすために政治(というか女王)を動かそうとするばかり。
しかし、まじで何なのあの遊び。しかもそのシーンをスローでじっくり写すのはマジで謎。

前作『聖なる鹿殺し』との共通点

寓話性の高い脚本作り

寓話性が高いってのは、ランティモスの最大の作家性というのは間違いないところだと思うのだけど、
まさか史実に基づいた英国王室映画にあそこまでの寓話性をもたせられるとは思わんかった。
結局、誰が正しくて、誰が何を得て(失って)、、というところが明示的には示されないのよね。
アン女王の表情(あれはオスカー掻っ攫うのも納得の名演)のみが何かを語る、という作り。

既存のコミュニティの崩壊

『聖なる鹿殺し』では、ある少年の登場により幸せな家族が徐々に壊れていくのだけど、 それが本作ではエマ・ストーンになるだろうか。
歪んではいるけれど、幸せに維持されてきたコミュニティ(しかもそのコミュニティは過去の傷だったりを庇うために歪んでいる)が、
最初は好ましく感じていた「部外者」の介入による崩れていく。
そして最後は、コミュニティの中心人物に選択を迫っていく・・。
なので、二作とも根源的なテーマはすごく近いのかも知れない。

筋張った身体と手コキ

前回はニコール・キッドマン、今回はレイチェル・ワイズエマ・ストーンの筋張った身体。。
これ絶対監督の趣味。
あと手コキ。
なんかどちらも男としては妥協して手コキしてもらってるテイで進んでるんだけど、 手コキされている間は、物凄い気持ちよさそうにしてんのよね。
基本的に登場人物の表情があんまり変わらない作品なので、あの男の感じぶりだけすごい違和感。
これも絶対監督の趣味。
ようは筋張った女に手コキされるのが好きなんだと思う。

無駄に出てくるロブスターやら鹿やら

これね。なぜか監督が無意味にアピールしてくる。
鹿食わねーだろ、英国でそんなに。

演技はすごいけど、作品賞はそりゃ獲れねーわ

演技はさんざん言われている通り、3人共超すごい。
ただ、作品として見た時に、やっぱり作家性が強すぎるのとテーマの曖昧さみたいなところで、 オスカー獲るってのはちょっと無茶だったような気はする。

あと、訳がよかった

松浦美奈さんの字幕が素晴らしかった。
私自身は、ブリティッシュアクセントと古い英語も多くて、そこまでちゃんと聞き取れていないだけど、
普通に日本語のセリフとして、世界観を壊してなかった様に感じたし、
テーマ的に重要なセリフの言い回しなんかは、とても上手に思った。 安定の松浦クオリティ。。

結局、おもしろい。人に薦めたくなる。

そんな感じで、ちょっと映画好きな人に薦める映画としてはかなり良い作品かなーと。
「作家性とは」、「演技とは」みたいなことを説明するのにも良いなぁと。
今まで、そういう人には『ライフ・アクアティック』を薦めることが多かったんやけど、
これからは『女王陛下のお気に入り』に変更しようかなー